アスラクウエディングプラン02:会場選び (文/山吹由沙様 絵/柊モカ)
(クルーゼ隊長のご厚意は有難いんだが・・・)
コーヒーを口に含み、アスランは小さく息をついた。
アスランのため息の原因となっているのは、目の前の机に山積みされたもの。
それは全て、結婚情報誌だ。
プラントを代表する婚約者同士として世間を賑わせたのが十四歳の頃。
あれから二年。十六歳となった二人が、正式に結婚することが決まったと報道されたのは、つい先日のこと。
かつて、一部のメディアでは「当人同士に特別な感情などない、ただの政略結婚だ!」などと報道されたこともあったが、
二年という月日を経て、二人は少しずつ愛を育んでいった。
そして・・・
『ここで速報です。かねてより婚約者として公表されていたアスラン・ザラ氏とラクス・クライン嬢ですが、
この度ついに結婚が決まったとの情報が入ってきました』
『号外ー!号外ー!アスラン・ザラ氏とラクス・クライン嬢の結婚が決まりましたー!』
それからが大変だった。
プラント議員を父に持つアスランは、政界の人間や自身の軍への挨拶回りに追われ、
歌手であるラクスもあらゆるメディアからのインタビューに応える日々が続いた。
それらがようやく落ち着いた頃、直属の上司であるクルーゼに呼び出されたアスランは部屋を訪ねていた。
「失礼致します。お呼びでしょうか」
「ああ、忙しいところ悪いね」
「いえ。こちらこそ、私事で隊長方にはご迷惑を・・・」
「迷惑なんかじゃない、おめでたい事じゃないか。そんな君に渡したいものがある」
そういうと、クルーゼはトントンッと指先で机を叩き、目の前に積まれたものを指差す。
ドアの前に立っていたアスランからは、それが何なのか判断がつかず、
「失礼します」と一声かけ隊長の前まで歩み寄った。・・・そして、固まった。
「・・・隊長、あの、これは・・・」
「見ての通りだ。遠慮することはない、全部持っていくといい」
一体どこから入手したのか。
そこには、華やかな女性が表紙を飾る結婚情報誌が山積みとなっていた。
おそらくアスランの結婚が決まったことを受け、集めてくれたのだろう。
しかし、この手のものは自宅に帰ればそれこそ何倍もの量が保管されている。
犯人はもちろん、両親であるパトリックとレノアなのだが、
何しろ婚約が決まった時から少しずつ買い溜めていたため、今では恐ろしい量になっているのだ。
クルーゼの厚意は有難いが、正直これ以上増えるのは勘弁していただきたい。
「・・・ありがとうございます。しかし・・・」
「受け取ってくれるね?返されても私も困ってしまうんだよ」
「・・・・は、はい・・・・」
「良かった。少し早いが、結婚おめでとう、アスラン」
―――そして、今に至る。
(結婚、か・・・)
再びコーヒーを口に運び、貰いものを無碍にすることも出来ないため何となく目を向ける。
パラパラとめくれば、多くの華々しい単語が視界に飛び込む。
『一生に一度の結婚式!』
『心温まる結婚式にしよう』
『結婚準備・式場選びならこれ!』
『最新!ウエディングプラン』
これまでまちもに目を通したことがなかったが、よく考えれば決めなければならないことが沢山ある。
式場やドレスを選んで、招待客や挨拶なんかも考えなければ。
それに、今まで二人きりで外出することはことんど叶わなかった。
式が終わったら、新婚旅行くらいは連れて行ってあげたい。彼女の喜ぶ顔が見たい。
(・・・ラクス・・・)
だが、結婚が発表されてからまだ一度も彼女に会っていない。
多くのメディアからインタビュー攻めにあっていると両親から聞いている。
彼女はプラントを代表する歌姫でアイドルだ。仕方がない。
けれど、スケジュールを詰めすぎて体調を崩したりしていなければいいが・・・。
直接会って、顔を見て、声を聞いて、元気な姿を確認したい。
ああ・・・
「会いたいな・・・・」
「どなたにですの?」
「ラクスに・・・・」
「まぁ、嬉しいですわ」
「・・・っ、!?!?」
何かがおかしい、そう感じたアスランが反射的に顔を上げると、そこにはピンクの髪をふわふわと揺らし、にっこり笑った婚約者。
アスランは驚きのあまり目を見開き、思わずソファーから立ちあがる。
その拍子に足がテーブルにぶつかり、残っていたコーヒーがテーブル上に広がる。
持っていた雑誌も小さく音を立てて落下した。
「大変です、アスラン。色々こぼれておりますわ」
「え、あ、すみません・・・・じゃなくて!そんなことはどうでもいいんです!ラクス!?」
「はい?」
「なぜここに!?」
「アスランに会いにきましたの」
「どうやってここに!?まさか、おひとりで来たんじゃ・・・」
「はい、一人で参りました。わたくしもう子供ではありませんのよ?」
ぷうっと小さく頬を膨らませたラクス。
その姿は非常に可愛らしいのだが、アスランは頭痛を覚えた。
ラクスの単独行動は、決してこれが初めてではない。過去にも何度か似たようなことがあったのだ。
その度にアスランは「もうこんなことはしないでください」と注意しているのに、どうも言うことを聞いてくれない。
しかも理由のほとんどが自分に会いに来たというだけに、来るなとも言えないし、
第一そんなこと言いたくないし、毎回頭を悩ませている。
そして、嫌な予感がするのが・・・
「お父上には言ってきたんですが?」
「いいえ、お父様はお仕事で留守ですわ」
「アリスさんは?」
「お電話中でしたの」
「・・・では、誰にも言わずにここへ?!」
「いいえ!きちんとピンクちゃんに伝言を頼みましたわ。あと、念のためオカピにも」
全然“念のため”になっていないのですが・・・。
アスランは大きくため息をつき、あとでクライン邸に謝罪の連絡を入れなくては・・・と思考を巡らせた。
「ところで、アスランは何をご覧になってましたの?」
ラクスに問われ、我に返った。
そうだった、今自分は休憩室にいて、クルーゼから押しつけられた・・・もとい、頂いた結婚情報誌を眺めていたところだ。
しかし、こんなところを他のクルーに見られては確実に面倒なことになる。
ましてや、同じクルーゼ隊の面子にバレた日には・・・。
考えただけで再び頭痛が襲う。とにかく、早くここを離れなくては。
「説明は後でしますので、ひとまず俺の部屋へ」
「?」
山積みの雑誌を抱え込むと、アスランはラクスを連れて一目散にその場を離れた―――。
***************
「まぁ、そういうことでしたのね」
ふふふ、そう言ってラクスは笑みを零した。
部屋に避難した後、アスランが事の成り行きを説明すると、ラクスは納得すると同時にどこか楽しそうに笑った。
笑いごとではないんですが・・・。
アスランは内心でため息をついたが、彼女が笑っていたので「まぁいいか」と思えてしまった。
ラクスの笑顔を見たのは久しぶりだ。
「ですが、本当に沢山ございますわ」
「ええ、そうなんです。実は、うちにもこれの何倍という量が・・・」
「あら、アスランのおうちもですか?わたくしの家にも沢山ございますのよ」
聞けば、シーゲルをはじめ、これまでお世話になってきた業界の人間やファンの人からも送られてきたのだという。
プラントを代表するアイドルともなれば、おそらく物凄い量が届いたに違いない。
だが、あまりに量が多すぎて、まだほとんど目を通せていないとラクスは苦笑した。
それはアスランも同じで、ここまでくると、もはや何から目を通せばいいのか分からなくなってしまう。
「せっかくですから、わたくしも見てもよろしいですか?」
「あ、はい。それはもちろん、お好きなものを」
「アスランも一緒に、ですわ」
そう言って、ラクスは自分の隣の席をポンポンと叩く。
だが、ラクスが今座っているのはベッドの上。
狭い自室には洒落た椅子やソファーもないため、必然的にラクスはベッドに座るほかなかったのだ。
いくら結婚が決まったとはいえ、色々意味でちょっと座りずらい・・・とアスランが躊躇していると、
「わたくしの隣はお嫌ですか・・・?」
と悲しそうに呟いたため、アスランは慌ててラクスの隣に腰を下ろした。
しかし、改めて見てみると、たった一冊でも内容は豊富であった。
式場はもちろん、ドレス・ブーケ・記念写真、さらにはエステや二次会に関する情報まで様々だ。
「ちなみに、ラクスはどんな結婚式にしたいんですか?」
「わたくしですか?」
「ええ。例えば、これを見るとチャペルやガーデン、少人数での挙式・・・あと、地球に習って神前式というタイプもあるようですが」
「そうですわね・・・」
ラクスは、うーん、と頬に手を当て考え始めてしまった。
それもそのはずだ。ラクスはどうか分からないが、少なくともアスランは
この雑誌を見るまで挙式の種類だけでもこんなにあることを知らなかった。
この調子でいくと、ドレスやブーケなんかもおそらく種類が豊富であろう。
自分たちだけでなく、互いの両親の意見も取り入れることを考えると、果たして全てを決め終えるまでどれだけ時間がかかるのやら・・・。
「わたくしは・・・」
しばらくしてラクスが沈黙を破る。
アスランが無意識に視線を横に向けると、彼女ははっきりと口にした。
「わたくしは、どこでも構いませんわ」
「えっ・・・?」
「大きな式場でも、小さな式場でも、何でも構いません」
「っ、しかし、何かご希望はないんですか・・・?」
「はい、ございませんわ」
「・・・・・そう、ですか・・・」
予想外の回答に、アスランは動揺を隠せない。
二年という婚約期間を経て、ラクスとの結婚が正式に決まった。
はじめは戸惑うことも多かったけれど、彼女と過ごした時間は温かく穏やかな日々だった。
そんな中で少しずつではあるが、確かに彼女に対して恋心も芽生えたし、愛しいという感情も抱いた。
だからこそ、こうして結婚が決まって素直に嬉しかったのだ。
だが、ラクスは違ったのだろうか。
たった一度の結婚式。二人でにあれこれ悩んで、一生思い出に残る式を挙げる。
そう考えていたのは自分だけだったのか。
彼女も楽しみにしている、そう思っていたのは自意識過剰だったのか・・・。
どこでもいい、という言葉が思いのほか重くのしかかり、アスランの表情が曇り始める。
「アスラン?」
「えっ、あ・・・はい」
「どうかなさいましたか・・・?」
心配そうに顔を覗き込むラクス。だが、その気持ちが今はあまり嬉しくない。
アスランの心をさらに複雑にさせるだけだった。
「・・・いえ、すみません。何でもないです・・・」
「何でもないというお顔ではありませんわ」
「本当に、何でもありません・・・すみません」
「なぜ謝るのですか?アスランは何か悪いことをなさったのですか?」
不安げになるラクスだが、アスランは耐えきれず視線を外した。
そして後悔する。
いつもそうだ。ばつが悪くなると、つい視線を反らしてしまい、ますます彼女を不安にさせる。
分かっているのに、どうしても面と向かっていることが出来なくなる。
結局、自身のことでいっぱいいっぱいになってしまうのだ。
だが、この日は違った。
スッと彼女の手がアスランの両頬に触れたかと思うと、半ば強引に視線を戻される。
驚いたアスランが目を見開くと、当のラクスは真剣な表情でこちらを見つめていた。
「隠しごとは嫌ですわ」
「ラ、クス・・・」
「何でもおっしゃって下さいませ。わたくし達、結婚するのですから・・・」
悲しげなアメジストの瞳に、こんな表情をさせてしまったのは間違いなく自分であるとアスランは悟った。
しかし、最初に不安を覚えたのも確かに自分なのだ。
解決方法はただ一つ。発端である彼女に、直接聞くしかない。
言うべきか迷ったが、アスランは思い切って重い口を開いた。
「・・・ラクスは、本当に俺と結婚してもいいんですか?」
「えっ?」
「確かに、プロポーズしたときにあなたは首を縦に振ってくれました。
しかし、本当にいいんですか?政略結婚だから、仕方なく承諾したのでは?」
「アスラン・・・?」
「俺は、あなたと結婚したいです・・・!挙式も楽しみなんです・・・!
しかし、あなたは先ほど『式はどこでもいい』とおっしゃった。それはつまりっ」
「お待ち下さい、アスラン!何か誤解してらっしゃいますわ!」
慌てた口調のラクスを初めて見た。
さすがのアスランも少々驚き目を丸くしたが、ラクスは構わず続けた。
「確かにわたくしは『どこでも構いません』と言いましたが、それは“どうでもいい”という意味ではありませんわ?」
「・・・えっ・・・」
「わたくしは“アスランと結婚出来るならどこでも構わない”という意味で言いましたのよ?」
「!」
アスランがまっすぐ自分を見つめてくれている。
そう確信したラクスはゆっくりと頬から手を離し、彼の手にそっと自身の手を重ねた。
「わたくしの夢は、アスランと結婚して、いつか紫の髪の子を授かることですわ」
頬を薄っすら桃色に染めて微笑む彼女は―――
「わたくしは、アスランと結婚出来るだけで幸せですのよ?」
とても、綺麗だった。
「ラクス・・・」
アスランの顔が見る見るうちに羞恥心で赤く染まる。
その姿に「誤解は解けましたか?」と微笑むラクス。
アスランは嬉しいやら恥ずかしいやら情けないやらで下を向くことしか出来なかった。
「すみません!俺、一人で勘違いして・・・本当にすみません!」
「いいえ。わたくしも誤解を招くような言い方をしてごめんなさい」
「いえ!ラクスは悪くありません、俺が悪いんです!すみません!」
「ふふふ、先程から謝ってばかりですわ」
「す、すみません・・・あ、」
くすくすと笑うラクスに、アスランは小さく「すみません」と呟いた。
***************
「わたくしはむしろ、早く結婚したいと思っていますのよ?」
再び、雑誌をパラパラとめくり始めたラクスがぽつりと呟く。
アスランがラクスを見つめると、その表情が少し寂しげに陰っていた。
「今は、どうしても会える時間が限られておりますでしょう?でも、結婚すればわたくしのいる家にアスランが帰ってきます」
「ラクス・・・」
「一緒に過ごせる時間が増えます。毎日、お顔を拝見することができます」
それだけで、嬉しいですわ。
その言葉に、思わずアスランはラクスを抱きしめていた。
「アスラン?」と腕の中で疑問符を浮かべる彼女に、アスランは腕の力を強める。
いつもそうだ。
俺は彼女に与えてもらうばかりで、何も返してやれない。
寂しい思いをさせていると分かっているのに、不甲斐ない自分は何もしてやれない。
休日に会いに行っても、気の利いた話も出来ず、プレゼントはいつも花束とハロばかり。
それでも彼女は笑ってくれる。嬉しいと言ってくれる。自身の全てを受け入れてくれる。
そんな彼女だから、俺は好きになった。そして彼女もまた、その気持ちに応えてくれた。
だからこそ―――
「もう、寂しい思いはさせません」
「アスラン・・・」
「一生、大事にします」
「・・・それは、二度目のプロポーズですの?」
「そうとって頂いても構いません」
ゆっくりと体を離すと、ラクスの頬に赤みが増していた。
そんな彼女を愛おしそうに見つめ、紅潮した頬を指先でなぞる。
「必ず、幸せにするから」
そうして、互いの距離をゆっくりと縮める。
ラクスはそっと瞳を閉じ、アスランもまた瞼を閉じかけた、次の瞬間・・・・
「アスラーン、これってお前の・・・」
「「!!!」」
「・・・あ、」
シュン――と、音を立てて部屋の扉が開き、そこに立っていたのは・・・
「・・・すみません。何だかお邪魔しちゃったみたいで」
「ヒュー♪やるなぁ、アスラン」
「ニコル・・・!ディアッカ・・・!」
同じクルーゼ隊所属の二人だった。
ニコルは見てはいけない場面に出くわしたと複雑そうな表情を浮かべ、
対するディアッカは面白いものを見たとばかりにニヤニヤと笑う。これで数日間はネタにされるだろう。
そしてこの二人とくれば・・・
「アアァスラァァーーン!!!!」
(やっぱり・・・・)
予感的中。
前に立っていたニコルとディアッカを押しのけ、イザークは顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「貴様ぁぁぁ!!!一体何をしていたっ!!!」
「っ、別に何もしてない!」
「嘘をつけっ!!このような密室に女人を連れ込んで・・・っ、なんて破廉恥な!!」
「「ブフゥッ!」」
いまどき破廉恥って・・・!
イザークの発言に思わず噴き出すニコルとディアッカだが、すぐに興奮したイザークにぶん殴られた。
「言っておくが、俺はお前達の結婚を認めてはいないからな!?」
「・・・っ、別にお前の許可なんか必要ないだろ!」
「なにぃい!?」
「イザークは、わたくしとアスランの結婚に反対なのですか・・・?」
と、ここで発言したのが、これまで沈黙を続けていたラクスだった。
これまでの成り行きを「皆さん仲がよくて羨ましいですわ」などと暢気に眺めていた歌姫だったが、
イザークの“結婚を認めない”発言に、思わず反応してしまった。
「ラ、ラクス嬢・・・っ!」
「イザークが良く思われないのは、わたくしに至らぬ点があるからでしょうか・・・?」
「と、とんでもありません!」
「確かに家事の経験は少ないですし、アスランにご迷惑をおかけしてしまうことも沢山あります。
けれど、わたくしはアスランのお嫁さんになるのが夢でした。
アスランの隣に並んでも恥ずかしくないよう、頑張りますわ!ですから・・・」
認めて頂けないでしょうか・・・?
祈るような思いで見つめてくる彼女に、イザークは唇を噛みしめ返す言葉が見つからない。
そんなイザークの姿に、さすがに哀れに思ったのかニコルとディアッカが同時に彼の肩を叩く。
「イザーク、これ以上ここにいるのは野暮というものですよ」
「いい加減、諦めろ。ラクスはアスランにベタ惚れみたいだしよ」
「っ、う、うるさい!!」
「それじゃあ、僕たちは先に戻りますから」
「ああ、それとアスラン。これ、お前んだろ?」
忘れ物。そう言ってディアッカから渡されたのは結婚情報誌。
なんでも三人が休憩室に行ったところ、テーブルはコーヒーが零れたまま、床には雑誌が落ちており、
今の時期にこんなものを見てるとしたらアスランしかいないと結論に至ったらしく、部屋にやってきたそうな。
そういえば、休憩室を出る際、慌てていたせいか片付けもろくにせず出てきたことをアスランは今更ながら思い出した。
「それじゃお二人さん。ごゆっくり〜♪」
シュン――と、音を立てて扉が閉まる。
ようやく静かになった部屋でアスランはドッと息を吐いた。
時間にしてほんの数分のはずなのに、やけに疲れた気がする。
「イザークは、認めて下さるでしょうか・・・?」
不安げに呟くラクスにアスランは大丈夫と口にしたが、
内心では果たしてどうなることやら・・・と苦笑を浮かべるほかなかった。
だが、それよりも・・・
「・・・ラクス。次の休みはいつですか?」
「えっ?」
「休暇を取れるよう、隊長に話してみます。決めなければならないことも沢山ありますし、とりあえず・・・」
次の休みは式場を観に行きましょう。
アスランの言葉に、パァッと表情を明るくするラクス。そしてそのままアスランに抱きついた。
「っ、ラクス!?」
「ありがとうございます、アスラン。お休みが分かり次第、すぐにご連絡致しますわ」
「は、はい・・・お待ちしています」
***************
そして、次の休日。
晴れ渡った青空のもと、仲睦まじい一組のカップルはいくつかの式場に足を運んでいた。
「アスラン、わたくし次に拝見する場所が一番気になっておりますの」
「ラクスもですか?実は、俺もチェックしていました」
美しい緑と陽光に包まれ、目の前に広がるのは一面の白薔薇。
『いらっしゃいませ、ホワイトシンフォニーへようこそ』
二人の挙式まで、あと半年―――。
Fin